29.1.12

解体報道を受け、緊急シンポジウムを開催、「声明文」を採択

 2012129日、当会は、緊急シンポジウムを開催し、約200名の参加者に加え、約400名のインターネット中継による視聴を得、満場一致で声明文を採択しました。


【声明文】
2012129
「大阪中央郵便局を守る会」代表 長山雅一

大阪中央郵便局庁舎の適切な保存と有効活用に向けて

1939年(昭和14年)に建てられた大阪中央郵便局庁舎は、戦前期における日本の建築文化の到達点を示す傑作であり、日本近代建築史上、最も重要な建築のひとつです。現在の日本の建築は、ここからはじまったと言っても過言ではありません。日本建築学会は、「国指定の重要文化財の水準をはるかに超える価値がある」との公式見解を示しています。
その価値は、建築単体に留まるものではありません。大阪中央郵便局庁舎は、大阪の優れた都市文化を今に伝える遺産でもあります。昭和の初期、大阪には数多くのモダンなビルディングが建設され、大阪人は都会のライフスタイルと最新の文化を謳歌しました。しかし既に阪急ビルディングもなく、大阪駅前に描かれた近代的な都市計画と景観を今に伝える建築は、大阪中央郵便局庁舎ただひとつとなってしまいました。この建築の解体は、大阪という都市の歴史を失うことに他なりません。
事業者の日本郵政グループは旧局舎の文化的・歴史的価値を認め、その一部を保存した事業計画とするとしていますが、その範囲はごく僅かです。しかも全体から細部に至るまでの透徹した均整こそが魅力であるこの建築の一部分を保存して、一体何が残るというのでしょうか。歴史的建築物の一部を残しただけで保存に応えたことにする昨今の風潮については、再考が必要です。
日本郵政グループは旧庁舎を解体して跡地を暫定的に整備し、地域活性化のための広場とするとしていますが、その広場は一体誰が望んでいるのでしょうか。大阪中央郵便局庁舎を慌てて破壊する必要はどこにあるのでしょうか。文化的なイベント広場をというのならば、大阪駅前の地域活性化を謳うのならば、庁舎を残して開放し、一度壊せば二度と取り戻すことの出来ない大切な歴史の遺産を、地域のシンボルとして、大阪の玄関口の顔として活用し、未来に残すことこそが必要なのではないでしょうか。

大阪中央郵便局庁舎は日本の近代建築史上最も優れた建築のひとつであり、その価値は海外にも認められるところです。また大阪駅前の都市景観を構成する重要な要素であり、大阪の玄関口としての歴史性と風格を支える存在でもあります。更に近代日本の郵政の有りようを今に伝える、近代産業遺産としての価値も有しています。何よりこの建物は、日本が戦争という難局にあるなか、当時の人々の知恵と技術を結集して、国が建設した公共施設なのです。それを公に開かれた十分な議論を尽くさぬまま、明確なビジョンもなく暫定的に破壊して空地とし、そこに仮設の郵便施設を設けるなどという行為は、暴挙というより他ありません。また現在発表されている事業計画は、保存とは名ばかりの、建築の価値を全く無視したものです。私たちは、解体と事業計画を白紙に戻し、大阪駅前の真の地域活性化と文化創造のために、大阪中央郵便局舎が有する非常に大きな価値と可能性をどのように活用すべきかという観点に立って、あらためて議論することが必要であると考えます。私たちは戦時下に建てられ、空襲をくぐり抜けて大阪の戦後を見守ってきた、このかけがえのない建物を、未来へとより良いかたちで使いつづけることを強く望みます。

日時  
2012129日(日)1400 -1630
会場  中央電気倶楽部(竣工1930年)
参加費 500円(資料代を含む)
定員  150名(申込不要・当日先着順)
主催  大阪中央郵便局を守る会
後援  DOCOMOMO Japan,近畿産業考古学会(KINIAS
    日本建築学会近畿支部,日本建築家協会(JIA)近畿支部
問合せ 大阪中央郵便局を守る会 osaka1939@s-takaoka.net
発言者
長山雅一(流通科学大学名誉教授,「大阪中央郵便局を守る会」代表)
橋爪紳也(建築史家,大阪府立大学教授)
南一誠 (芝浦工業大学教授・学長補佐,日本学術会議連携会員)
松隈洋 (建築史家,京都工芸繊維大学教授)
橋寺知子(建築史家、関西大学准教授)
高岡伸一(建築家,大阪市立大学特任講師, 「大阪中央郵便局を守る会」事務局長)
倉方俊輔(建築史家,大阪市立大学准教授)/司会
[第1部]レクチャー(約60分)
1.「大阪中央郵便局と大阪駅前の都市計画」橋爪紳也
2.「大阪中央郵便局庁舎の解体は誰のためなのか」南一誠
3.「大阪における近代建築の活用の高まりについて」高岡伸一

[第2部]ディスカッション(約40分)
1.「近代建築再生活用の最前線」松隈洋
2.「大阪中央郵便局についての検討委員会の審議経過について」橋寺知子
3.「大阪という都市の魅力と大阪中央郵便局の価値」倉方俊輔 ほか

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