■大阪中央郵便局は重要文化財の指定に値するか
何度も繰り返しますが、原告らは国に対して、大阪中郵を重要文化財に指定することを求めています。従って、大阪中郵が重文指定に値するかどうかが、当然大きな争点となってきます。実際、原告の訴状や準備書面は大量の論拠を示して、その紙幅の多くを大阪中郵の価値について、すなわち日本の近代建築史において、最も重要な建築のひとつであることを示すことに費やしています。
しかし、裁判ではこの点は争点となっていません。なぜなら、被告である国が全く反論してこないからです。
平成6年に文化庁内の文化財保護審議会にて了承された、重要文化財の指定に関する方針を定めた資料があります。そこには近代の建造物の指定に関して下記の基準を定め、いずれかひとつに該当することを指定の方針としています。
a. 近代化遺産(建造物等)の総合調査の結果、重要性が認められたもの
b. 近代和風建築総合調査の結果、重要性が認められたもの
c. 建築学会・土木学会等の主要な学会で価値が認められているもの
d.地方公共団体が独自に調査、保存、活用等の措置をとった結果、新たに価値が判明したもの
大阪中郵は、a.とc. の2つに該当します。a. については、「大阪府近代化遺産(建造物等)総合調査報告書(2007)」で、「戦前のモダニズム建築の最高峰として評価される建築である」と書かれています。c.
については、これまで日本建築学会が4度に渡って、公式に保存要望書を出しています。
大阪中郵が重文に値する価値を有することは、文化庁自ら定めたこの基準からいっても、明らかなのです。
国側は、大阪中郵の指定に関しては、これまで一度も文化審議会に諮問されたことがない事実をもって、原告団の主張に対する唯一の反論としています。しかしこれは言い換えれば、非常に高い価値が明らかである大阪中郵を一度も諮問に出さなかった、文化財行政の怠慢、文部科学大臣の裁量違反を、自ら示す結果となっています。
※次回からは、裁判の最新の状況についてレポートします。
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