全てを一新すれば奇麗になる、人が集まる、文化が生まれる、経済が活発になり、活性化する。確かにそうかもしれませんが、歴史的かつ良い物までも残せないというのは裏返すと、「この街には余裕がない、ゆとりがない」ことを現している気がします。
東京中央郵便局は紆余曲折がありながらも東京駅前の景観として残りJPタワーとして完成間近ですが、こちらは延期されたうえ、2年の間に保存に関し再検討もされずに解体。これでは東京と違いを見せるというよりも単に「歴史・文化が大事にされない土地」というのを示すだけではないかと考えます。もっと言えば、新しいビルができてもハッキリいってローカルスポットで終わりになるのではと感じます。
今、大阪都という形でグレーター大阪をもう一度、という動きが在る中で、「大大阪」の時代に実際に存在した建物。国家が大阪を重要視していたことを示し、そしてモダニズム建築として東京中央郵便局より一層突き詰められた大阪中央郵便局の建物を今解体して、広場で地域活性化などといっても、結局何もその後に「何も残らない」のではないでしょうか。
私が近代建築に関心を持つ中で、大阪には官民ともに近代化の歴史を背負った、様々な建物があったことを知りました。しかし例えば阪急百貨店という、それこそ誰しもに親しまれていた、そして日本初のターミナルデパートという歴史を背負った建物が取り壊されてしまった。また、私が生まれる前には、大阪砲兵工廠や、大阪市役所といった建物が反対運動もある中取り壊された事を知り、「そういう都市なのか」と考えてしまうのです。
そして今度はこのモダニズム建築が、玄関周りだけが切り取られて、「歴史的価値を継承することを前提」に、なんていうのがまかり通ってしまう。私は数年前、上部にネットがかかってしまった、東京の中央郵便局を実際に見に行きました。なので大阪中央郵便局は、ネットがかけられることもなく、常にキレイで、「大事にされていた」事を感じたのです。
私は何よりも、その建物が、都市計画のため歩道を広げるために、活性化のために、と行政も民間もどちらも壊す事を最初から前提にしていることが悲しいのです。
今一度、この建物を新しい形で活用することを真剣に検討して欲しいと願います。近代美術館が話題になりますが、そうした事に活用することも一つではないでしょうか。大阪駅前という超一等地に、「本物の場所で、本物の文化」に触れられる、楽しいスポットがあれば素敵ではないかと思います。
「現代人にとって価値が感じられにくい、価値あるビル」をしっかり後世に伝えることこそ、全国に「大阪は歴史ある大都市だ」と示すことが出来るのではないかと考えます。
また、東京のJPタワー保存部分と共に兄弟的建築として東西共に、景観として保存されることが大事と私は思うところです。
大阪の文化遺産としてはもちろん「日本の財産」であるこの建物が、「とりあえず」広場になってしまうのが本当にいいのか。
東京よりも一層建築を尊重し保存する事で「東京よりスゴいことをやった」と評される方が、全部まっさらにする再開発よりも「全国的な」スポットにすることができるのでは無いでしょうか。
今取り急いで取り壊す事を前提にするのではなく、この建築を活かしながら、また玄関だけを残して価値を継承した、などという事無く、建物をしっかり尊重し後世に伝える再開発が検討されることをどうか強く、お願い申し上げます。
兵庫県伊丹市 福間 健太